17歳の女の子との出会い
U-CRANE大作戦第4弾で食料や日用品の支援を終え、そろそろ帰りましょうかというその時、何やら相談している様子。
「カーテンがなくて夜の間電気がつけられない」って言ってるのよ。
いつも支援活動をアレンジしてくださる日本ウクライナ文化協会のナターリヤさんが通訳をしてくれました。
彼女は17歳。1日前から一人暮らしを始めたといいます。
女の子の一人暮らしでカーテンがないのは困りますね...ということで、私たちがその日のうちに彼女の部屋にカーテンを用意することとなりました。
日本語教室の申し込みを終えた彼女と落ち合い、今後も日常の買い物がしやすいように彼女の家から一番近いホームセンターへ向かいました。
とっても気さくな17歳。
ウクライナの学校での英語の成績はあんまり良くなかったという彼女ですが、意思疎通はスムーズに英語でとることができます。移動中の車の中ではたくさんのお話をしてくれました。
家族のこと、ロシアのウクライナ侵攻が始まってからの緊迫した生活や避難の様子、日本に来ることになった経緯など・・・その中で
「わたしは自分の国ウクライナがすごく好き。だからこんな風に外国で暮らすことになるだなんて全く予想もしていなかった。当たり前のようにウクライナの大学に進学してウクライナでやりたい仕事をできるもんだと思っていた。もちろんアニメをたくさん観るし日本の文化は身近だけど。」
言葉が胸に残りました。
日本の高校生たちが卒業して新しい人生をスタートさせているちょうどこの時期、彼女は思いもよらない形で全く言葉の通じない国でゼロからの一人暮らしを始めることとなったのです。
「日本の学校には通いたいの?」と聞くと、「高校に通いたい場合、何とか通わせてもらうこともできるみたいだけど、学校に通うと生活費を稼ぐ時間がなくなっちゃうから・・・。どーしようかな。まだ決めてない。」
「仕事は言葉が話せないことで迷惑がかからないような、日本語を使わない仕事なら何でもいいと思ってる。」
もっと前向きな気持ちで日本に来てもらえていたら良かったのに、と切なくなったと同時に、これから彼女はその強い心で生き抜いていくんだろうなと頼もしさも感じました。
ホームセンターに着くと真っ先に彼女が惹きつけられていたのは観葉植物。彼女の住んでいたところはウクライナの森の中だということで、たくさんの自然に囲まれて育った彼女は少しでも故郷に近い環境を欲しているようです。生活費もままならない状況にも関わらず、帰り際にかわいいお花のついた小さな鉢を自分のお金で買っていました。
本命のカーテンを探しに行きます。「私はピンクや緑、茶色が好きなの」そう話しながら30種類くらいはあろうかというカーテンからお気に入りを探します。「んー、これは高いからやっぱりこっちにしておく」遠慮しながら選んだのは茶色い葉っぱの柄のグリーンのカーテンとピンクのカーテン
「これすっごく可愛い!!カーテンを買っただけでこんなに幸せな気持ちになれるなんてっ!」
ととても嬉しそうにカーテンを抱えて満面の笑みを浮かべていました。
そして食器3枚、スプーンとフォーク、フライパン、ゴミ袋を購入して彼女の新しい自宅へ。
募金で購入した生活用品
最低限の電化製品と布団のある部屋。100均で買ったという可愛らしいタオルと座布団がお気に入りだと教えてくれました。早速買ってきたカーテンを2人でつけると、
「すごく可愛い。ありがとう!」何度も何度も繰り返していました。
気に入ってくれたカーテンと一緒に
彼女が見せてくれたのはウクライナの昔話の絵本。とてもカラフルな挿絵の絵本にはウクライナの昔話がいくつも入っているそうです。もちろん私には何も読めないので絵を楽しむことしかできませんが・・・。
来日直後に身を寄せていたおばさんの家からもらって来たということでした。リュックひとつでの避難を強いられ日本にやってきた彼女は、母国ウクライナの思い出を何も持ってくることができなかったのです。
彼女が買ったお花とウクライナの絵本
帰り際、彼女がお土産にとくれたのがウクライナの紙幣2枚。
「これでアメリカドル2ドル分くらいかな。よかったら持って帰って。」
今まで外貨をこんな気持ちで手にした事はありませんでした。たったの2ドルですが、海外旅行で使い残した外貨とは全く比べ物にならないほど尊いものに感じたのです。
17歳の彼女に出会った記念として、生涯大切に取っておこうと心に決めました。
50フリヴニャ紙幣と5フリヴニャ紙幣
17歳の彼女の人生はこれからどんな風に変わっていくのでしょうか。
クレインに通ってくれている生徒たちと同年代の彼女は、日本の高校生と何も変わらない無邪気な笑顔を見せてくれました。
自分の置かれた状況を受け入れ前へ進もうとするその頑張る姿を、とても愛おしく感じました。
そして、将来日本での時間を振り帰った時に、「あれも悪くなかったな。」と思ってもらえるように支えていきたいと強く思った数時間でした。
彼女と今後も連絡を取りながらサポートを続けていこうと考えています。
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