昨今、人種や性別に関する「多様性」や「寛容性」が世界中で叫ばれており
多様性の乏しい日本国内においても、
アメリカの黒人差別や、LGBTといった話題に関心が高まっています
その一方で、「英語の多様性」については実はあまり語られることがありません
今日は、私が大学院で研究をしていた"World Englishes"という分野のお話をしたいと思います。
皆さんは以下のような発言についてどう思いますか?
「英語を習うならアメリカ人の先生がいい」
「オーストラリアに留学するとなまりが強いからどうかなぁ」
どうでしょう?
これに違和感を覚える、と言う人は少ないのではないでしょうか
このフレーズは私が教員をしている間、頻繁に耳にしたことばでした
でも、これは英語という言語の多様性を無視した
時としては人を傷つける可能性のある発言なのです
以下に少し詳しく解説していきます
まず、はじめに押さえておかなければならないポイントは、
日本語が日本でしか(ほぼ)使われていないのに対して、
英語は【 世界の共通語 】
としての側面を持っているということです
"World Englishes"の権威であるKachru Braj B.という学者が
「3つの円」という概念を用いて世界で広がる英語について説明しました
・一つ目の円(Inner Circle 内円)=英語が第一言語として用いられている国
イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど
・二つ目の円(Outer Circle 外円)=家では現地の言葉を、そして学校では英語を第二言語として用いている国
シンガポール、フィリピン、インド、バングラディッシュ、フィジー、ナイジェリア、ジャマイカ…その他多数
そして
・三つ目の円(Expanding Circle 拡大円)=日常生活すべてで現地語が用いられ、英語は教科として教えられている国
日本、韓国、中国、フランス、スペイン、メキシコ、ブラジル…
The ‘three circles of English’ a s conceived by Kachru (1985, 1992a), after Crystal (1995:107)
英語は用いられる土地の現地語だけでなく文化や歴史、政治的な影響も受けながら
大きく変化してきました
ですので、イギリス人の英語とアメリカ人の英語が違うのも当然ですし
フィリピンの英語も日本人の英語もそれぞれに異なります
そういうわけで、Englishを複数形にした【Englishes】ということばが作られたのです
私がこの学問に出会ったのは、オーストラリアの大学院でした
当時は、オーストラリアのネイティブみたいな英語が話したいという願望を持ちつつ
自分の話す英語に自信が持てずにいました
でも、このWorld Englishesに出会い、
「ネイティブになろうなんて考えるのが間違い」
「英語は様々、みんなそれぞれ違っていいんだ」
と強く勇気づけられました
それ以降、この学問を深く追究していくとともに、
自信を持って堂々と英語でコミュニケーションができるようになっていきました
アメリカに行こうと、オーストラリアに行こうと、英語が第一言語として用いられている国(内円)は基本的に多文化国家ですから
さまざまな種類の英語が使われているというのが現実の世界
ところが、日本で学ぶ英語では、どの教科書にも標準アメリカ英語一種類しか採用されておらず、
その結果、
「ちゃんとした本物の英語」「ネイティブ神話」という幻想が作り上げられているのです
今度の共通テストでは、アメリカ英語だけでなくイギリス英語も採用されるということですが、
世界の英語の多様性を考えると、到底現実世界を反映しているとは言えません
多様性を認めていく社会の重要性が少しずつ浸透しつつある今日、
英語の多様性に対する理解も進めていく必要があります
いまはまだ小さなクレイン英学校ですが
多様でカラフルな英語に触れてもらえる英語の世界をこれから提供していければと感じています
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