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タルサの貧困と教育

タルサ滞在最終日の朝、宿泊しているHoliday Innの会議室でタルサ市公立学校教育委員会のメンバーMs. Shawha Kellerと面会した。タルサ市を7つの地区に分け、それぞれの代表で教育委員会は構成される。オクラホマ州からの指示は標準テストや教員最低賃金や授業日数などで、各教育区が主体的にカリキュラムや時間割を決めている。

彼女によると、タルサ市の問題は深刻な貧困と教員不足で、生徒の80%は貧困家庭の子供で、移民(不法も多い)、難民などのマイノリティが85%を占めると言う。また親が仕事を転々としたり、離婚や親の不安定な生活状況から、そのような生徒は学校を変わることが多く(英語でStudents' high mobility)、学習は2の次になっているのが現状のようだ。生徒の衣食住の安定のため、朝食、昼食は学校給食が無料で支給され、夏休みの間も学区に関わらず生徒が食べに来られるサマーカフェを実施している。

Kelly氏に、「もし教育委員会に自由なお金を与えられたら何をしますか」という質問に、「教員の増員です」と即座にきっぱりと答えた。





午後は、オクラホマ州立大学タルサ分校に移動し、教育パネルディスカッション, The State of Education in Oklahomaと題するパネルディスカッションに参加した。




大きな吹き抜けのホールにたくさんの円卓が並び、ランチをしながら、4名の州の議員や教育委員長がスピーチを行なった。




隣に座っていた女性曰く、司会者を含め登壇者らはとても人気高く、講演会はいつもすぐに満席になるという。参加者の多くは退職した元教員と思しき老人で、スピーチに熱心に耳を傾けていた。これまで聞いてきたように、深刻な教員不足の問題、それを引き起こす生徒の貧困や低い給与水準についても語られたが、この集会では、「2008年と比べ州の教育予算を引き上げた」「教員の給与はこの2年間で7000ドル増加した」「初等教育や工業教育は全米でもトップランクに位置している」といった成果がグラフとともに示され、彼らの働きの成果が強調される報告が多かったように思えた。悲観するばかりではなく前向きで未来志向の発言によって参加者を巻き込むスピーチは、さすが代議士だ。「すべての子どもはチャンピオンになるに値するのです」という言葉は印象的であった。

タルサを出る前に最後に訪問したのは、YWCA(Young Women Christian Associationの略)。日本支社の設立者は津田梅子だそうだ。ここでは主に難民の家族がアメリカにやってきてから市民権を得るまでの生活全般をサポートしており、タルサ市の難民の状況全般について話を聞くことができた。ここで受け入れている難民で一番多いのはミャンマーからの難民、ついで東ヨーロッパ諸国、そしてシリアなど中東の国と続く。難民や移民はアメリカに到着後グリーンカードを得られるまでに1年間の待機期間があり、グリーンカードを取得後5年して初めて市民権を申請する資格が与えられる。ちなみに家族単位で入国した際、家や家具はすべて供給され、8ヶ月間は食事や医療費も無料だそうだ。

YWCAは彼らが入国してから仕事を得られるように教会やイスラミックセンター、学校と連携しながら多方面の支援をしており、親と子どもそれぞれに英語を教えるプログラムや、トラウマへのケアをするプログラムなどを提供しているそうだ。




日本の入管難民法が改正され今後数多くの外国人労働者がやって来て、いずれは市民として生活するようになっていくであろう今後を考えると、アメリカが提供して来た移民・難民受け入れのシステムやアメリカが抱える課題を政府だけでなく自治体レベルでしっかりと学んでいかなければならないと強く感じた。

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