クレインの入るビルの入り口通路から奥に行くと、クレインに上がる階段があるのですが、その前に集合ポストがあります。ほとんど投函物のないクレインですので、開けない日もあるくらいなのですが、今日はポストを開けると…
なんとエアメール!
しかも宛先が日本語で書かれている?
誰だろう?
差出人は、私がオーストラリアから帰ってきてすぐ1年間だけ常勤講師として勤めた県内の公立高校の卒業生。
この学校で、私は1年生の副担任としていくつかのクラスを担当していました。またそこは地域の中核校で、生徒たちは真面目で勤勉な生徒が多く、みんながいつも気持ちの良い挨拶をしてくれる、そんな学校でした。勤務は一年だけでしたが大好きになった思い入れの深い学校です。いま振り返ると、留学で多くの知識と経験を得て帰国したばかりだった私は、そのアウトプットをすべく荒削りながらも全力で生徒たちに英語を伝えていたように思います。
彼女は、勉強はそんなに得意ではなく、授業中も悪気はないのでしょうが、いつのまにか眠りに落ちている生徒でした。授業中にぼーっとしていることが多かったからか少し掴み所のない生徒だったのですが、不思議と放っておけない愛らしい生徒で、私は「かばちゃん」という愛称で呼んでいて、教室のいちばん後ろの座席で、うとうとしてる彼女に、よく「かばちゃん、起きて」と声をかけていた光景が今でも鮮明に蘇ります。
その学校での一年の赴任が終わり、新年度が近づいた頃彼女からフェイスブックメッセージがやってきました。
"Hello Mr. Harada. I forgot to bring a letter today ;; Sorry~TT Do you have the day you come to school?... "
残念ながら、その時に彼女と会うことはできませんでした。それから7年して、突然の連絡がありました。
彼女はもう大学4年生になっていて、大学在学中に世界を見て周り、すっかり立派になっていました。大学が終わりに近づき、将来のことについて色々と考え、悩む中で私の顔が浮かんで連絡をしてきてくれたのかもしれません。その時に私がどんな話をしたのかはもう覚えていないのですが、きっと「若いうちに海外をたくさん見たほうがいい」「やりたいことはやるべきだ」といった、私が常々持っている想いを伝えたような気がします。
さて、それからさらに4年、彼女からの手紙を受け取れなかったあの時から10年が経って、クレインのポストに届いた手紙
彼女が今暮らすのはオーストラリアのブリズベン。1年間ニュージーランドに住み、それからオーストラリアに移住し1年が経つそうです。
大きなポストカードにびっしりと彼女の思いが綴られていました。海外で暮らすってどういうことか、勉強するってどういうことなのか、本当にそうだなぁって思うことばかりの内容なので、少しここで紹介させてください、かばちゃん。
『日本人だから良かったこと、あまり良くなかったこと。英語は1日じゃ伸びないし、“海外にいる日本人”にも本当に色々なタイプの人がいること、毎日幸せに暮らしている人、そうじゃない人…でも一番大切なのは、小さなHappyを大切に、心の健康を優先して、自分が歩んできた道を肯定してあげることかなって。』
『高校時代、勉強することが本当に辛かったです。でも何年か経って、今自分が勉強したい!と思った時って本当になんでもできるんですよね…』
海外に行かないとわからないことはたくさんあります。彼女と違って、私は受験英語は大の得意でしたが、25歳になるまで外国に行ったことがなく、英語も使えなければ、異文化で生きることの意味も、そこから見える世界も何も知りませんでした。
だからこそ、英語教育に携わる者の使命として、クレインでの英語学習を通じて、実際に海外に行ったり、日本国内で海外の人と関わるという経験をしてもらいたい、と強く思ってきましたし、この手紙で改めてそう感じました。
勉強は自分からやれなければ意味がないし、自分から進んでやれれば必ず伸びる。そしてそれは何歳になっても同じ。
いまの学校教育制度では、中学の一年生で過去形の不規則動詞を覚えないといけないとか、高校2年生で分詞構文を理解しなければいけない、とか「いつまでにここをみんなが通過しなければならない」というハードルがたくさんあります。
テストや受験がある限り、生徒たちは限られた時間の中で結果を出さなければいけないわけで、そのニーズに応えるべくクレイン英学校でも英語の授業を個々の生徒に応じて行っているわけですが、同時に現行の教育制度に常に違和感を覚えています。
かばちゃんのように高校生の時に必ずしも成績が良かったわけでなかった生徒が、その後世界に大きく羽ばたき見聞を広め、人生を深めていく人を何人も見てきました。彼らの人生を見ていると、
「今自分が勉強したい!と思った時って本当になんでもできる」
というかばちゃんの言葉は心に滲みます。今この瞬間の英語の力をつけることだけでなく、その後の人生に種まきをするような、そんな気持ちで目の前の生徒さんたちに英語を伝えていきたいと思います。
かばちゃん、がんばれ!オーストラリアでの活躍応援してます。帰国した時には、ぜひクレインに遊びに来てくださいね。
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